大こくゑひす

だいこくえびす

『大こくゑひす』は『大黒舞』『大悦物語』などとも称される、室町時代末期に成立した御伽草子である。いわゆる立身出世譚の一つであり、親孝行な主人公が、清水寺への参詣を経て、大黒天と恵比寿という福の神の守護を受けて出世し、富貴と栄華を手にしてゆく様子を描く。物語中には、現代においても、わらしべ長者として親しまれる説話や節分の豆まきについての故事のほか、庶民や貴族の生活の様子なども盛り込まれており、その内容は極めて多岐に富む。『羅生門』『大江山奇譚』と同様に、大黒天やその供にあたるネズミを始め、鬼、悪霊など人ならぬ異形の者が数多く登場するが、『羅生門』『大江山奇譚』に見られるような陰鬱さは感じられない。美しい奈良絵と物語の展開からは、豪華で華麗な縁起物としての価値を十分に味わうことができる。なお本絵巻は江戸時代前期の延宝・貞享頃の作品ではないかと推定されている。