保元物語

ほうげんものがたり

軍記物語の一つ。『保元記』ともいう。『平治物語』『平家物語』『承久記』とあわせ、四部合戦状とも称される。通例、三巻三冊で構成される。他の軍記物語同様、いくたびも書きかえられ、内容の異なる諸本を産んだ。

現存する諸本の古態本としては、文保本[文保二年(1318)書写、中巻のみ]・半井本が知られる。以後、後続する代表的な諸伝本に、鎌倉本・根津本[この系統の伝本に京図本がある]・金刀比羅本[この系統の原初形態に宝徳本がある]・流布本などがある。

十三世紀前半から十五世紀中ごろ以降に及ぶ長い歳月が、この物語の流動、変容した期間であり、琵琶法師によって語られた。保元の乱の顛末を描いたこの物語の世界は、諸本によってかなりな内容の異同を持つが、おおむね上巻に、鳥羽院崩御を機とする崇徳上皇と後白河天皇の対立の経緯、ならびに争乱前夜の動向、中巻に上皇方源為義・為朝らと天皇方源義朝・平清盛らの軍事衝突の詳細、下巻に戦いに敗れた崇徳上皇方敗者の動向を描く。半井本は、文体・構成ともに素朴、話題の拡散をおそれず、土くささをのこし、金刀比羅本は、詞章の洗練、構成密度の凝縮、物語 的情趣の強化など、一つの完成形態を示す。
 
本伝本は、流布本系統と呼ばれるもので、寛永三年版に最も似ているとされており、本学図書館において貴重図書として登録している。

縦二三・七糎、横一七・九糎の綴葉装、近世初期の写。濃紺地に金草木模様表紙の中央題簽(一四・五糎×三・二糎)に「保元物語 上(中・下)」と墨書きされている。上冊は、墨付五二丁、遊紙は四丁(前一・後三)。中冊は、墨付七五丁、遊紙は三丁(前一・後二)。下冊は、墨付六四丁、遊紙は四丁(前一・後三)。一面十行、一行はだいたい十六字乃至十八字詰め。本文料紙は鳥の子。各巻頭に目録・章段の区分がある。本文は平仮名交り。本文と同筆による墨書訂正が認められる。

本伝本は、流布本系統写本の一本と考えられる。
なお、本書の本文は、寛永三年版に最も似ているばかりか、寛永三年版の誤りを正し得る本文を有する伝本。

『佛教大学図書館蔵貴重書図録』より