原文

【十一之巻】五条天神

此御神は天上の御神高皇産魂尊の御子少彦名命也
此芦原の中國にとゞまりて素盞嗚尊と御心をあはせ
日本の地行をつくり
政をさためまた諸薬をつくり
民の病くを癒し給ふ御神也
天子御悩の御時は今も此社に靱をか
けらるとかや
疫をはらふ薬を作り給ふゆへ
醫家の租神とす
まいねんせつぶんの
夜此やしろまへに餅白朮をうる也
らくようの札所なり

解説

巻十一には五条天神、因幡堂および海佛、御影堂、若宮八幡、建仁寺および木遣り、四条芝居小屋が紹介されています。建仁寺木遣りの図では開山の禅師栄西と力を出すときのかけ声の由来について述べられ、芝居小屋ではこれまた上下二段取りの三葉に都万太夫座(初代坂田藤十郎の居た小屋)の入口付近や観客席、舞台の様子が描かれています。本来、向こう一年間の出演役者のお披露目であった顔見世の図では、歌舞伎の年度始めが十一月一日であったことがわかります。現在南座の顔見世がきりのよい十二月一日ではなく十一月三十日から始まるのはこの名残です。また芝居小屋では歌舞伎だけではなく、人形遣いや軽業など様々な見せ物も行われていました。