ペスタロッチ著『数関係の直観論』・デューイ著『子どもとカリキュラム』(32-3)

 今回は、展示資料10点のうち、本学図書館所蔵のペスタロッチ、デューイの著書を山﨑高哉図書館長(教育学部教授)の解説により、紹介します。

 Johann Heinrich Pestalozzi : Anschauungslehre der Zahlenverhaltnisse. Pestalozzis Elementar-Bucher, J. G. Cotta’schen Buchhanndlung. 1803.

 ペスタロッチが『ゲルトルートはいかにしてその子を教えるか』で展開した新しい教授法(メトーデ)に基づいて彼及び彼の協力者たち(クリュージー、ブース、シュミット等)が作った初歩教科書のうちの一冊『数関係の直観論』。本書は、直観に基礎を置く多数の表(単位表、分数表等)から成り、『量関係の直観論』とともに19世紀以降の算数・数学教育に少なからぬ影響を与えた。

 John Dewey : The Child and The Curriculum. The University of Chicago Press, 1902.

 1896年にシカゴ大学教育学部に附属小学校を設立したデューイが実験学校での教育実践に基づいて著したカリキュラム論『子どもとカリキュラム』の初版本。デューイによれば、子どもとカリキュラムとの間には明白な「食い違いや相違」がある。その代表的な一つが、子どもの狭い個人的な世界と時間的空間的にも際限なく拡大されたカリキュラムの世界との対立である。これらの対立・葛藤から、「旧教育」と「新教育」という二つの学派が生じる。前者は子どもの経験内容より教科を重視し、後者は子どもの成長・発達こそ教育の出発点であり、中心・目的であるとする。しかし、両者の見解に対し、デューイは、子どもとカリキュラムとの乖離ではなく、両者の緊密な結合を説く。すなわち、子どもとカリキュラムは、二つの点が一つの直線を規定するようなもので、子どもの現在の立場と教科における事実と真実が教授を規定するのである。(論理的な)教科は「心理学的に」解釈され、子どもの経験によって再構成されなければならない。