大江山奇譚
オオエヤマ キタン Oeyama kitanタイトル Title |
大江山奇譚 オオエヤマ キタン Oeyama kitan |
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別書名 Alternative Title |
大江山絵巻 オオエヤマ エマキ Oeyama emaki |
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解題 Bibliography
本学には本書と同様に、文部科学省の私立大学助成事業の一環として設備助成により購入することのできた『羅生門』二巻を所蔵している。両者とも、勅命を受けた源頼光が、美女をさらって都を騒がせていた鬼を退治するという共通したストーリーが基本となり、体裁も同じく絵巻物に仕立てられた奈良絵本であるが、表現にはかなりの違いがみられる。
『大江山奇譚』(『酒呑童子』)には、美しいとばかりは言えない場面が多々見られ、奈良絵本製作の目的のひとつであった貴族や大名の姫君たちの嫁入り調度品としては、あまり似つかわしくない部分も多く含んでいる。
同じ主人公による鬼退治談ではあっても、『羅生門』には都でのシーンが多く登場するのに比して、『大江山奇譚』はその名のごとく、都の郊外、荒々しい千丈ヶ嶽(大江山)、不気味な鬼ヶ城を描く場面に絵や詞の多くが割かれている。
人間が足を踏み入れることもできないような険しい山中で、酒呑童子は都の貴族のような屋敷を構えて、客殿や庭のしつらいまでなされた、表向きにはひじょうに豪華な暮らしをしている。客殿の床の間には何の本なのかはわからないが、冊子と巻子が並べられている図もあり、知的な生活空間であることさえうかがわせる一方で、『羅生門』にはみられないような鬼の生活習慣について、当時の人々が考えていた残忍な鬼の行為が具体的な表現で描かれている。
もちろん架空の話なのではあるが、そのうらにはある種、人間の思想が存在するはずであり、それらを考えるうえでも重要な要素を含んだ作品といえる。
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大きさ Extent
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あらすじ Summary
神話の時代を過ぎた日本では、一条院の代になって国は栄え、人々の暮らしも大変よくなったが、都から若い女人達が次々と消え失せるという事件が発生する。その数があまりに多くなり、大騒ぎとなって、朝廷も見過ごすことはできなくなった。
娘を奪われた池田の中納言國賢という貴族が、占いが的中することで有名であった安倍晴明という相人を召してたずねたところ、千丈ヶ嶽の鬼・酒呑童子の仕業という。いてもたってもいられなくなった國賢卿はこのことを御門に奏聞する。報告をうけた御門は清和天皇の流れを引き、武芸に長ける源頼光に鬼退治の勅命を授けた。頼光はその四天王である渡辺綱、坂田金時、占部季武、碓井貞光等を伴い神の加護を願って石清水八幡宮、住吉社、熊野社に参詣し、さらに藤原保昌を加えて、都合六人で千丈ヶ嶽へと向かったが、道中険しく、人の通う道とも思えない山道を進み、ようやく鬼の城へとたどり着く。出発前に参詣した三所の神仏の加護とともに、鬼に捕えられていた姫達の案内もあり危機を乗り越える。頼光は途中で仏神化身の男達にもらっていた毒酒を童子、鬼の眷族に飲ませ、体の自由を奪ったうえで討ち取り、生き残った姫達を連れて都へ帰還する。
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