デジタルコレクションに「元亨釈書」「釋淨土二藏義」を追加しました。
元亨釈書
鎌倉末期成立の日本仏教史書。鎌倉後期の禅僧・虎関師錬の著作。伝、表、志の三部からなる。最初の刊行は永和3年(1377)で、ついで慶長4年(1599)、慶長10年(1605)、元和3年(1617)にそれぞれ活字版が、寛永元年(1624)に木版本が出版されている。本書は巻末に「慶長乙巳歳仲夏日 下村生藏刊之」とあることから慶長10年の古活字版であることがわかる。巻末に名が記されている下村生蔵は印刷者と考えられており、他に『医学正伝』(慶長8年刊)、『教誡新学比丘行護律儀』(慶長9年刊)などの古活字版の出版に関わったことで知られている。また本書には「嵯峨蔵」の蔵書印があるが、印主は不明。
参考文献:今枝真愛「元亨釈書」(『国史大辞典』)、『江戸時代初期出版年表』
釋淨土二藏義
「釋淨土二藏義」は、法然上人以来の浄土宗義を集大成した書で、浄土宗第七祖の聖冏(1341-1420)の著。慶長14年(1609)、慶長17年(1612)、寛永期の活字版が知られている。本書は刊記のない古活字版で、巻10の巻末には「于時寛永第五辰季初夏下旬第五天」「于時寛永第五辰暦初夏下旬第五天此三十巻書者成就畢 沙門教誉年三七」とあることから、寛永5年以前の出版であることが分かる。また本書の各巻末には「城州伏見 光慶寺」「光慶寺」などとあり、伏見の光慶寺で所蔵されていた。
参考文献:藤堂祐範編『浄土教古活字版圖録』