デジタルコレクションに「往生要集抄 古活字版」「承久兵乱記」「翻譯名義集」を追加しました。

デジタルコレクションに「往生要集抄 古活字版」「承久兵乱記」「翻譯名義集」を追加しました。

往生要集抄 古活字版
鎌倉時代の僧・良忠(1199-1287)が撰述した源信「往生要集」の注釈書。巻下第1、巻中第2のみが合冊となっている、古活字版である。下巻の第2を欠くため刊記がないが、寛永3(1626)年の刊行と考えられる。
「往生要集鈔」の伝本の標題は「往生要集鈔」と「往生要集義記」の二種がある。写本や成立の早い版本は「鈔」であり、寛永年間の木活字版以降は全て「義記」となっている。
本資料には「洒竹文庫」、「洒竹」の印があり、大野洒竹の旧蔵であったことがわかる。大野洒竹(おおの しゃちく:1872-1913)は明治時代の俳人・医師で、古俳諧研究に携わる一方、俳書収集につとめた。
参考文献 佛教大学総合研究所『浄土教典籍目録』

承久兵乱記
承久3(1221)年に起こった承久の乱の顛末を記した軍記物語である。「承久記」ともいう。「承久記」は作者・成立年代とも未詳だが、慈光寺本が最も古態を残していると言われ、その後流布本が成立し、それを抄出したものが前田家本であると見られている。本資料はその前田家本の系統であり、元和年間(1615~1623)の書写であると考えられている。
本資料には「盛安」、「平杉原出雲守」、「野津基明庫本」の印がある。「盛安」と「平杉原出雲守」の印主は杉原盛安という人物で、公家の九条家の家司であった。杉原は本資料の他にも「源氏物語絵巻」の作成に関与していた他、「二十一代集」、「日本書紀目録」などの写本を所蔵していた蔵書家であることが近年の研究で明らかにされている。また、「野津基明庫本」の印主は彦根藩主で国学者であった野津基明(1803~1876)である。
参考文献 恋田知子「江戸初期における絵巻制作の一背景:中井正知・杉原盛安の文化活動」(『藝文研究』95、2008年)

翻譯名義集
南宋時代に成立した梵漢辞典。刊記はないが、江戸初期刊行と推測される古活字版である。巻頭に本書編者の法雲について紹介した「蘇州景徳寺普潤大師行業記」を付す。
本書には「春翠文庫」、「西生寺」の印がある。前者の印主は中島仁之助(号春翠)で、古活字版や絵本画譜類の収集で知られる人物である。当館ではこの他にも「春翠文庫」の印を持つ古活字版「秘密漫荼羅教付法傳」、「選擇傳弘决疑鈔」を所蔵している。