いはや : 下
イワヤ : ゲ Iwaya :Ge-
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- 【03】
-
さるほとに中将とのは此人いかゝあらんと
おほつかなくおほしめして御さま
をやつしいたしきの下に入てあそひ
のやうをきゝ給ふひめきみの御とも
にはさこんのせうなり御くるまよせ
てはるかにのきてかしこまるくるまよせ
のつま戸のまへにはたかとうたいに
火をかゝけて女はう三人手ことに
しそくふとくしてもちたれはきう
かさんふくのなつの日草もゆるかすてる - 【04】
-
ひよりもなおあきらかにくまなしにう
はうさしよりてしたすたれをかきあ
けはやくおりさせ給へと申せともへん
しをもしたまはすいかにもすたれを
おさへてかきあけたまはねはをのく
さゝやき申けるはくうてんらうかく玉の
うてなゆめにもみしさうなくおり
かねたるもことはりなりとそ申けるやゝ
しはらくありていまは人くおもひわ
すれたりとおもふおりふしおりさせ給ひてたれかいしやくも申さねはみつ
からきぬのつまひきあはせはかまのき
きはひきつくろひ御くしかきなて
小そてのうへにゆりなかしあふき
かさしたまはすおしたゝみてそもたせ
給ふもやのみすのまへをてんしやうはる
かにあゆみ給ふ御すかたはさみたれに
みつまさるむつたのよとのかわやなき
のあやめまこもの上をこすよりなをた
をやかなりひすいのかんさしはきぬの - 【05】
-
すそにあまりて八尺ゆたかにゑんの
うへをそひかれけるやなきの糸をはる
かせのふきみたれたるよりなをほそく
たをやかなりあはれ御すかたをゑに
かきてあまねく人にみせはやな
いかなるゑしもふてにうつしかたく
そおほえけりさて御さのうへになを
りうちそはみてそおはしますさて
見みまはし給へはにしきのしとねあや
のきちやうさこんのゆかたまのすたれ一の人の御前なれはこゝろにておもひし
にわかちゝのにしのたいをこしらへた
まひしにまさりたりともおほえす
むかしをこふるなみたつゝむにたえ
ぬみたれかみかそふるそてにあま
れるを
さらぬていにもてなし
たまふ御けしき
たとへんかたなく
らうたけなり - 【06】
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きんするこゑよりもなをおもしろき
御こはねなりそのときれいけいてん
ことをとりいたしちとあそはし給へ
とありけれはひめきみのたまふは
いそにしくるゝまつのかせおきのかもめ
のともよふこゑよりほかはきゝならは
ぬ身にて候へはかやうのことゝやらんは
おもひもよらぬ事との給へは中将殿
いたしきの下にてきこしめしかほと
の事とかねてしりなはなとかひわ - 【07】
-
ことをしへさるへきよしくひわこと
引すとも九ほんれんたいの雲の上まて
もはなれましき物をとおほしめし
てさてきゝ給へはれいけいてんせひ
あそはせとありしかはひめきみ
つめもなく候ものをとのたまへは御手
をりやうかくのもとにそへられけれ
はそむきかたきおほせやとて御ひさ
のうへにかきのせ給ひてことちたて
なをし二七のをかきあわせひき給へはこゝろことはもおよはれすつゐにかほと
のことの上手はきかすとみなくおほし
めしけるおもしろき事申はかりもなし
さてまたひわをまいらせてこれあそは
せとありけれはおもひもよらす候と
しきりにしたいありしかとも御こと
のやうにあそはし給へとて御ひわを
さしよせ給へはあらそむきかたやとて
御ひわをとりなおしをあはせをして
ならし給ふはちをとまきのいたとを - 【08】
-
ことくしくあられたまちるおとより
もなをけたかくそきこえけるさてひの
御さの上にゐなをりはんしきに
ねをとりりやうせんたくほくの三きよく
二へんまてこそひかれけれ雲のうへ
まてもすみのほり天人もあまくたり
ほさつもこゝによふかふあるかや神も
めてたくゑみ給ふらんときゝしらぬも
のまてもそゝろにそてをそしほりけ
る中将とのゝこゝろの内なにゝたとへんかたそなきさてあかつきにもなりぬれ
は御むかひのくるままいりぬいとま申て
との給へはいましはらくとひきとゝめ
てそのときれいけいてんは御ことのやく
みやす所は御ひわのやく
そのほかほうけうひちりき
とりくにてひめきみはわこん
をまいらせたまひて
かくをそはしめ
給ひける - 【09】
-
まことにこくらくしやうとにて廿五の
ほさつたちのあそはすかくもかくやと
おもひしられたり夜もほのくとあけ
けれは御いとまこいましくて御くるま
にそめし給ふ人く御なこりをし
さに御くるまよせまていて給ひこれ
まてまいりて候とのたまふさためてを
それ入て候との給はんとおもひしに
さはのたまはて御くるまのしたすたれを
あけてなに事もせんあく二つのならい - 【10】
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むくひある事にてまいるましきと
申つるをしきりにめしつるむかひに
これまての御いてはとてすてにおり
させたまはんとし給ふ御けしき
ことはのしなにいたるまてゆふに
やさしくおはしますきたのまんところ
のおほせにはふしきなりとよ中ころ
ほり河の大納言のみやはらのひめきみ
こそてかきかくしやうにてうたれんか
のみちなにゝつけてもくらからすひわことわこんなとをは十さいより内にて
そのみなもとをきはめらるゝさらに
ほんふとはおほへすとて人くこゝろ
をかけられしわれも中将のために
こはんとせしかとも四位のせうしやう
にせんをこされてちからをよはて
ありしにそのころ大納言たさいふへ
くたりしにあかしのうらにて日本に
さうおうせすとてりうくうへとられて
さてこそ四位のせうしやうはこれをかな - 【11】
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しみしよしやの山に有とはきけその姫君
も今世のあまのむすめにはよもあらし
にくしと思ふわれらたにあしき所はみ
いたさすみれ共くあく事なし何といふ
とも中将此人をはよもすてしすてぬ物ゆへ
ににくみてかいもなし右大臣のむすめも
中将のみ手はよめならすあまの子なりとも我
子のみるこそよめなれ此人にすきたる人は
よもあらしいたはしやさこそたよりのなかるらん人
をつかはすへしとてゑもんのかみ兵衛のすけゑもんのつほねに女房三人はしたもの三人うえはらは三
人十二人のものともを車三両にのせてつかはし
給ひけりをくり文に夕へはけんさんに入参せう
れしくこそ候へ誠にさまく御いとなみに心
もきへかへりしやうかいの思出とこそそんし候へ
はしめてのけんさんなれとも百年もなしみ
たる心地して御かへるさのなこりおしさいか
はかりとも思しめすいまよりのちは日く
にも御入ましくてみつからなくさめて
たひ候へ中将にくし給へはわか身の子共に - 【12】
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かはる事はなく候また此ものともみくる
しく候へともとしころのめしつかひもの
ともにて候はちさせたまはて御つ
かい候へとてをくられけるこそありかた
けれひめきみ御ふみ御らんしていま
はすこしのたよりもありと御よろこひ
ましくて世にすくれたる御手せ
きにて御返事をそあそはしける
きたのまんところ四人のきんたちともに
御らんしてさてもいつくしき御手かなすみつきふてのたてともしのなら
ひにいたるまてまことににんけんの
わさとは見えさりけるとそのたまひ
けるそのとき中将とのおほせけるは
いまはなにとてかほとまてつゝませ
たまふへからすありのまゝにかたり給へ
みつからにさのみに物なおもはせたまひ
そとのたまへはひめきみさめくと
うちなき給ひておやなれはあまのかた
そゝろにこひしくてたもとのかはくひま - 【13】
-
もなし御心にかゝらぬはことはりなり
われらかためにはおやなれはわするゝ
事も候はすとなをもつゝませ
給ひけりさるほとにあかしのあまは
しゆつけのこゝろさしふかくてところ
のもく代ゆるさねはちからなくして
女のあまはかりかみそり御けうやうさま
くいたすそうしてしやうある物をは
とらすしてわかめかちめあまのりこふ
のりなとのたくいをとりて世をそわたりけるおりくは山に入野にまよひ花
をたをりみつをむすひてあけくれ
ひめきみの御ほたいふかくとふらひけり
あるとき中将とのかも八まんへしん
めをまいらせらるなに事の御いのり
そときくにひめきみたゝならすわた
らせ給ふかはや五月にならせ給ふ
そのいのりのためとそきこえける
そのゝち天下のおほせには中将は
あまの子にくしぬれわか子にあらす - 【14】
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むまれたらん子なんしにてもによし
にてもそれを我子にすへしむま
れたらんときはゝかひさにおかすして
いたきとりこれへわたすへしとありけ
りほとなく月日かさなりて御さんた
いらかにせさせ給ふあたりもかゝやく
ほとのしかもわかきみにてそまし
くける大納言のすけきぬのそてに
つゝみとりまいらせ二条にしのたうゐん
の中納言とのを御めのとにめされこひにゑいくわにはほこるへき
世にすめはかゝる事をうけたま
はるとてもとひきりかうやさんへ上り
しをほめぬ人こそなかりけれひめ
きみのはゝみやの御ときの人く
このよしをうけたまはりわれもく
とまいりふんくしよりやうをた
まはりてさかえけりさるほとに
月日かさなりてわかきみ十九にて
大しやうをうけたまへりひめきみは - 【15】
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女御にまいりたまふたいのやはき
たのまんところと申てめてたく
さかへたまふをとをきはきゝてうら
やみちかきはたのしむいていりのも
すそをつらねひかりをかさしふつき
はんふくたとへんかたもましまさす
かゝるたくひすくなきひめきみはしやう
こもいまもすへの代もありかたし
とそおほへける人ためによき
ものはけんせあんおんこしやうせんしよと佛もときておきたまへり
御ちきりあさからすして
のちには
もろともに
わうしやうのそくわいを
とけ給ふ
二世のちきり
こそ
めてた
けれ
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書誌情報 Metadata
タイトルTitle |
いはや イワヤ Iwaya |
別書名 Alternative Title |
岩屋草子 イワヤ ソウシ Iwaya soshi 岩屋の草子 イワヤ ノ ソウシ Iwaya no soshi |
---|---|
巻次Volume Title |
下 ゲ Ge |
部編番号Alternative Volume |
3 |
出版者Publisher |
[書写地不明] : [書写者不明] |
出版年Date | [江戸前中期] |
時代区分Temporal | 江戸 Edo |
主題Subject | 物語・説話 Story & Tale / 絵巻・絵本 Picture scroll & Book |
資料種別Materiar Type | 和古書 Early Japanese Book / 図書 Book / 静止画資料 StillImage |
タイプType | Image / Text |
フォーマットFormat | image/jpeg |
言語Language | 日本語 jpn |
彩色有無Coloration | 有 Coloring |
刊写別Publication way | 写本 Manuscripts |
一般注記Description |
個別書誌作成(和古書) |
OPAC URLCatalog Record | https://bukkyo.userservices.exlibrisgroup.com/discovery/openurl?institution=81BU_INST&rfr_id=info:sid%2Fsummon&rft_dat=ie%3D21301648920006201,language%3DEN&svc_dat=CTO&u.ignore_date_coverage=true&vid=81BU_INST:Services&Force_direct=false |
原資料識別子Source Identifire |
書誌ID: 991002690639706201 NCID: BA71488681 |
公開状況Access Rights | インターネット公開 opened |
二次利用Rights Statements |
著作権なし-利用制限あり (詳細は「コンテンツの二次利用について」をご覧ください。) |
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