デジタルコレクションに「往生要集」「往生要集義記 江戸初期版」「往生要集義記 寛永18年版」「往生要集鈔」「往生禮讚私記」を追加しました。
往生要集
「往生要集」は寛和元年(985)成立の仏教書で、源信の著。極楽往生のためには念仏の実践が重要であると説いた。 本書の巻末には「永元四年四月八日刻彫畢、願主大法師實眼勵微力、於自心抛財寳・・・」とある。「永元」という元号は日本にはなく、承元4年(1210)の誤りと考えられている。また、本書は承元4年当時に印刷されたものではなく、その覆刻版である。覆刻版には室町中期版と江戸初期版の二種類があるとされる。 本書の料紙は雲母引き、装丁は粘葉装で、表紙には金色の題簽が貼られている。
参考文献 藤堂祐範『浄土教版の研究』、日下無倫「惠心僧都の往生要集古版本について」(『書物の趣味』第4冊)
往生要集義記 江戸初期版
浄土宗第三祖良忠撰。源信『往生要集』の注釈書である。『往生要集義記』の伝本には『往生要集鈔』と『往生要集義記』という二種類の表題があり、成立の早い写本・版本には『往生要集鈔』、遅いものには『往生要集義記』の名が付けられている。本書は刊行年の記されていない古活字本であるが、寛永年間に刊行されたものと推測され、本書以降に刊行されたものはすべて『往生要集義記』となっている。蔵書印は8巻末に「其中堂印」があり、また各巻頭に「仙波喜多院 周海藏」の墨書がある。
参考文献 稲田廣演「往生要集鈔」(『浄土教典籍目録』)
往生要集義記 寛永18年版
浄土宗第三祖良忠撰。源信『往生要集』の注釈書である。『往生要集義記』の伝本には『往生要集鈔』と『往生要集義記』という二種類の表題があり、成立の早い写本・版本には『往生要集鈔』、遅いものには『往生要集義記』の名が付けられている。本書の巻末には「寛永辛巳仲冬日 / 書舎理兵衛刊行」の刊記が入る。版元の理兵衛は本書と同じく寛永18年(1641)に『東福仏通禅師枯木集』、慶安元年(1648)に『由良開山法灯国師法語』などを刊行している書肆である。
参考文献 稲田廣演「往生要集鈔」(『浄土教典籍目録』)、『江戸時代初期出版年表』
往生要集鈔
鎌倉時代の僧・良忠(1199-1287)が撰述した源信「往生要集」の注釈書。全8巻のうち巻4のみが残る写本であるが、書写者は不明である。
「往生要集鈔」の伝本の標題は「往生要集鈔」と「往生要集義記」の二種がある。写本や成立の早い版本は「鈔」であり、寛永年間の木活字版以降は全て「義記」となっている。
これまで確認されている「往生要集鈔」の伝本の中で、最も古い年記を持つものは貞治2年(1363)の尊経閣文庫本であるが、本資料はそれに前後する室町初期頃の成立と考えられている。
参考文献 佛教大学総合研究所『浄土教典籍目録』
往生禮讚私記
善導「往生礼讃」の注釈書である。浄土宗第三祖である良忠の著作。本書は下巻を欠くため刊記が確認できないが、他本との照合により慶長16年(1611)に刊行された古活字本と推測される。
参考文献 藤堂祐範編『浄土教古活字版圖録』